H・P未来産業創造研究会

高圧処理とは

高圧処理とは、食品の加工に100MPa(1000気圧)以上の圧力を利用する技術です。高圧処理は、熱処理と比較して栄養素の破壊や有害物質の生成、エネルギーの消費が少なく、さらに容器内全ての部位で均一な処理が可能であり、これからの食品加工に適しています。

水深と静水圧

水深と静水圧の図

静水圧とは、水が物体や水自体に及ぼす圧力のことです。静止している水中では、深さが10m増すごとに静水圧は0.1MPa(1気圧)ずつ増えていきます。地球上で最も深いマリアナ海溝の深さはおよそ10000mあり、そのときの静水圧は100MPa(1000気圧)です。高圧処理では、自然界には存在しないほど高い静水圧を圧力容器内に発生させて利用しています。

静水圧の発生方法

静水圧を発生させる高圧処理装置は、加圧方式によって2つに大別されます。1つは直接加圧方式(a)と呼ばれ、ピストンにより圧力容器内の圧媒を直接加圧し、圧力容器内の体積を減少させることで静水圧を発生させます。もう1つは間接加圧方式(b)と呼ばれ、増圧機により圧力容器内に圧媒を送り込んで加圧するものです。このタイプは圧力容器内の体積を変化させず、その上一度に処理できる容量も大きいため、生産用に適しています。

静水圧の発生方法の図

圧力による水の状態変化

圧力による水の状態変化の図

私たちが生活する1気圧(0.1MPa)の下では、水は0℃で氷になり、100℃で沸騰しますが、高圧下の水は異なる挙動を示します。「圧力」と「熱」はそれぞれ独立した状態変換因子であり、圧力を利用した場合、熱とは全く異なる食品加工が可能です。例えば、-10℃の冷凍食品に圧力をかけていくと、150MPa前後で一度溶け、400MPa前後でまた凍ります。減圧の時も同じ工程を辿るので、非常に短時間で「溶ける→凍る」を繰り返すことが出来、菌数が減少していきます。つまり、高圧処理を用いることで、食品を冷凍のまま低菌化することが可能となるのです。

卵でみる高圧処理による物性変換

卵でみる高圧処理による物性変換の図

鶏卵に700MPaの高圧処理をおこなっても、卵の殻の内外で均等な反力がかかるため、卵は割れず、外観はほとんど変わりません。しかし、下記の写真のようにしっかり固まっており、香り・栄養は生のままです。卵の黄身の色は鮮やかで、食感は生卵ともゆで卵とも全く異なります。このように卵の中身が固まったのは、高圧処理によりタンパク質の変性がおこったためです。しかし、圧力処理によって変性したタンパク質は熱処理によって変性した場合とは物性の面で異なる状態を作り出すので、全く新しい食品素材の開発が期待されます。

加熱処理 高圧処理